2023.10.3

活動事例

IoS-OP運航性能解析勉強会への参加

海運業界の連携強化によるコラボレーション機会の創出

 

はじめに

BEMAC東京データラボ(以下、「データラボ」)では、AI技術の研究開発やデータ分析などを通じて、海事産業の課題解決に日々取り組んでいます。ソリューション提供において、取り組むべき課題の把握のためにまずは業界に対する知見を得ることが不可欠です。特に、若手や異なる職種から来たメンバーにとって、情報収集の場や他の企業と交流する場は広く知見を得られるという直接的な利点に加え、業界への興味・関心が深まるきっかけになると考えています。こうした思いから、海洋関係、AI、データサイエンスに関係する勉強会への参加や支援を行っています。今回は、弊社がスポンサーの1社として支援しており、データラボメンバーが受講者としても参加している「2023年IoS-OP運航性能解析勉強会(初級)」(※1)についてご紹介します。

IoS-OP運航性能解析勉強会の目的

IoS-OP運航性能解析勉強会とは、株式会社シップデータセンター(ShipDC)が事務局を務めるIoS-OP(Internet of Ships Open Platform)コンソーシアム(※2)が、同コンソーシアムの参加企業および未加入の船社を対象として開催している勉強会です。本勉強会には多数の船社や業界関係者が参加しており、スポンサー企業によるプレゼンや参加企業の施設見学会も実施しているため、船社と業界関係者を結ぶ重要な役割を果たしています。またデータラボとしても、こうした活動を通して関係者との関係構築を図り、情報共有やコラボレーションの機会創出を一つの目的としました。

勉強会の内容

本勉強会では、海運業界における環境規制、平水中・実海域中の船舶データ、就航データの解析などについての講義、演習、また参加企業ごとに自社の取り組みを踏まえた提案や、意見交換を行いました。全6回の講義が行われ、基本はオンラインでの参加となり、一部の講義は任意で現地参加となりました。

今回の勉強会プログラム

特に近年は、既存の大型外航船の燃費性能規制である「EEXI規制」や、燃費実績の格付け制度である「CII格付け」といった環境規制の開始に伴い、温室効果ガス(GHG)排出量改善策の提案のためにも、船舶データの分析・活用が求められています。そのため、講義のテーマの1つである「就航データの解析」では、就航している船舶のデータを分析することで、船舶の劣化具合などの船体状況を推測することや、運航にかかる燃料代の予測などを行い、船舶の運行に関する意思決定への貢献を目的としました。こうした就航データ解析によって、海運業界における様々な課題に対するソリューションの提案が可能になると考えられます。これらの内容について、勉強会の最後には今回学んだ就航データ解析を活用した提案発表も行われました。

講義で利用された資料例(就航データ解析に関する講義)

スポンサープレゼンについては、BEMACが行っているデータ利活用に関する取り組みについてプレゼンを行いました。

スポンサープレゼン資料(TDLの取り組みについて)

また、今回の施設見学会は、弊社の施設見学を愛媛県今治市にて開催しました。

施設見学会参加者の集合写真(BEMAC驀進ベースにて)
施設見学会の様子(BEMACみらい工場にて)

本勉強会に参加して

本勉強会に参加することで、船舶データの解析に関する知見を高めることができ、今後のデータ分析業務やプロジェクトにおける意思決定に役立てることができると感じています。特に、CII格付けなど環境規制や就航データの解析に関する講義は、燃費改善に関する課題等、船社が抱えていると思われる課題の解決に向けたソリューション提案のために役立つ知見を得られたと感じています。
また、提案の発表や懇親会を通じて、船社や業界関係者の方々との関わり合いを持つことができました。船社の方々と合同で学ぶことで、船社の取り組みや就航データに対する視点などについて知ることができ、船舶に関する知見をより深められたと感じています。
日本を含む多くの国々がカーボンニュートラル実現を目標としている中、海事産業においてもカーボンニュートラルや脱炭素など、GX(グリーントランスフォーメーション)に対する需要は高まってきています。そのため、今回のような勉強会を通じて、海事業界全体でGXに関する研究開発力やソリューション提案力の強化が必要だと感じています。
データラボでは、今後も様々な勉強会への参加や支援を行うことで、海運業界における連携強化や、安全性と効率の向上に貢献していきたいと考えています。


(※1)プレスリリース:https://www.classnk.or.jp/hp/ja/hp_news.aspx?id=9522&type=press_release&layout=1

(※2)IoS-OP:船舶の運行データを、データ提供者の利益を損なわずに、ステークホルダー間での共有や、造船所やメーカー等への利用権販売、各種サービスへの提供を可能とすべく、海事業界内で合意されたルールと、データセンターで構成された共通基盤。