2026.7.31

インタビュー

【TDL Member Interview12】

星を読み解く解析力を、海事産業の未来へ―データサイエンスで船舶の課題解決に挑む

BEMAC株式会社 東京データラボ 
和久井開智

 

幼いころから抱いていた海や船への憧れ。学生時代に天文学で培ったデータ解析の力を、今度は船舶や海事産業の課題解決へ。Pythonを用いた解析や可視化を通じて、複雑な船の動きを理解し、未来の運航支援や自動運航技術へつなげる挑戦について聞いた。

CONTENTS

  • ・海と船への憧れ、入社の決め手
  • ・天文学で培ったデータ解析の力
  • ・Pythonで船の動きを読み解く仕事
  • ・自ら考え、答えを形にしていく面白さ
  • ・海事産業に広がる技術活用の可能性
  • ・AIとデータサイエンスで挑むこれから
  • ・最後に

海と船への憧れ、入社の決め手

入社を考えたきっかけの一つは、もともと海や船に対する憧れがあったことでした。幼いころから海にはロマンを感じており、大きな船が海の上を進んでいく姿にも強い興味を持っていました。そうした世界に、技術者として関われることに大きな魅力を感じました。

もう一つの決め手となったのは、大学や大学院で学んできた解析技術を活かしながら、データサイエンスに取り組める環境があると感じたことです。東京大学大学院理学系研究科では天文学を専攻し、観測データをPythonなどで解析していました。その経験を、船舶や海事産業という実社会の課題解決に活かせる点に惹かれました。

また、社内に同じく天文学を専門としていた方がいたことも印象に残っています。自分のバックグラウンドを理解してもらいやすい環境だと感じ、「ここなら自分らしく働ける」と思えたことも、入社の大きな後押しになりました。

天文学で培ったデータ解析の力

学生時代は天文学を専攻し、大学院では「系外惑星の大気」をテーマに研究していました。系外惑星とは、太陽系の外にある惑星のことです。それらについて、宇宙望遠鏡で得られた観測データをもとに、惑星の大気にどのような特徴があるのかを推定する解析に取り組んでいました。

研究では、Pythonを使って観測データを統計的に解析する手法を主に用いていました。国内ではまだ広く共有されていない解析技術を習得する機会もあり、膨大なデータの中から意味のある情報を引き出す力を身につけることができたと感じています。

天文学と海事産業は、一見すると全く異なる分野に見えるかもしれません。しかし、「大量のデータを扱い、そこから現象を理解する」という点では共通しています。星や惑星を観測データから読み解いてきた経験は、現在の船舶データ解析にも確かに活かされています。

Pythonで船の動きを読み解く仕事

現在は、主にPythonを使ったプログラム開発やデータ解析を担当しています。船の運航に関するデータを扱い、船が着岸するときの動きや、航海中の性能を可視化・分析するプロジェクトに参加しています。

具体的には、船の位置や速度といったデータをもとに航行の様子を可視化したり、力学的な計算を通じて船の状態を推定したりしています。船の動きは非常に複雑で、データをそのまま眺めるだけでは、何が起きているのかを把握しづらい場面も少なくありません。
そのため、プログラムを書いてデータを整理し、グラフなどの見える形に変換することで、現象を理解しやすくすることを意識しています。データの背後にある船の動きや状態を読み解き、次の改善や判断につなげていくことが、現在の大きなミッションです。

自ら考え、答えを形にしていく面白さ

この仕事のやりがいは、自分で考えながら、ある程度の裁量を持ってプロジェクトを進められるところにあります。もともと、物事を突き詰めて考えることが好きで、現在の仕事でもその姿勢が活きています。

扱う課題の中には、最初から正解がはっきり決まっているわけではないものも多くあります。その中で、「今、何が分かっていないのか」「どうすれば分かるようになるのか」を自分なりに整理し、一つひとつ検証しながら進めていくプロセスに面白さを感じています。

一方で、実際の船舶データは複雑です。単純な理論やモデルだけでは説明しきれないこともあり、現場の状況やデータのばらつきも考慮する必要があります。難しさはありますが、その分自分で考え、試行錯誤しながら形にしていく楽しさがある仕事です。

海事産業に広がる技術活用の可能性

実際に仕事に関わる中で、海事産業にはまだ新しい技術を活かせる余地が多くあると感じています。船は非常に大きな構造物であり、その運航にはさまざまな要素が関わります。船の動き、気象や海象、港での運用、燃費、安全性など、考えるべきことは多岐にわたります。
だからこそ、データ解析やAI、シミュレーションといった技術を用いて、複雑な課題を一つひとつ整理し、解決につなげていく面白さがあります。簡単に答えが出る分野ではないからこそ、技術者としての探究心が刺激されます。

海事産業は、現実世界の複雑さと向き合いながら、技術の力でより良い運航や安全性、効率化を実現していく領域です。複雑な対象だからこそ、技術者として取り組みがいのあるフィールドだと感じています。

AIとデータサイエンスで挑むこれから

着桟評価などのプロジェクトに参加している中で、扱えるデータ、そこから出来そうな事、それを実現するための手段も、山のようにあると感じました。
だからこそ、与えられた課題だけでなくデータを見て自分で仮説やアイディアを見つけ、使える形にしていくことに挑戦したいと考えています。

それを実行していくうえで、データサイエンスの技術やAI活用の手法を積極的に取り入れ、可視化や評価だけでなく、運航技術を支える基盤そのものに携われるようにもなっていきたいと考えています。
自分の強みである解析やプログラミングの経験を活かしながら、海事産業の課題解決に貢献できる技術者を目指していきます。

最後に

惑星に関する膨大なデータを分析し、その姿を読み解いてきた経験は、今、船の動きや海事産業の課題を読み解く力へとつながっています。

海や船への憧れを原点に、天文学で培った解析力とプログラミングスキルを活かし、データサイエンスの力で海事産業の未来に貢献する。複雑な現象に向き合い、自ら考え、技術で答えを形にしていく挑戦は、これからも続いていきます。