船舶向け次世代バッテリーマネージメントシステムの開発
船舶のGHG(温室効果ガス)削減の手段として、重油以外の新しいエネルギーの活用に取り組んでいます。その中で、「電気を蓄える」リチウムイオン電池を使用した船舶の設計によって、従来の船舶に比べてCO2排出量を低減できる可能性があります。
ただし、船舶には大容量かつ個々の船に応じた運用や環境に適したリチウムイオン電池が必要です。そのためには、これらの電池を適切に監視・制御するシステムや船内の電気システムと連携することが不可欠です。当社では、これまでのリチウムイオン電池開発の経験を活かし、バッテリーマネージメントシステムの開発に取り組んでいます。また、将来的には船内の電気システムへの対応を念頭に、船舶の持続可能なエネルギー利用を支援し、環境への負荷を軽減することを目指しています。
- 産学連携による専用リチウムイオン電池システム開発(2010~)。
- NK大容量電池ガイドラインに準拠したリチウムイオン電池パック開発(~2019年)。*認証取得
- OEMにて太陽光発電向けLiBシステム製品を提供。
次世代ハイブリッド電源開発
本プロジェクトでは、船舶の交流電気系統に連系できる電源装置の開発に取り組んでいます。船舶の限られたスペースに設置するため、次世代の半導体であるSiCや効率的な冷却方式の研究開発を行い、小型化に注力しています。
船舶では、電源の喪失は重大な事故につながる可能性があるため、特に高い信頼性が求められます。そのため、製品化に際しては船級規則やIEC規格に準拠することはもちろん、実際の船舶での過酷な使用環境でも堅牢に動作するための実負荷試験も行っています。また、船舶の電磁環境に適応するために、ノイズやEMC(電磁的適合性)に関してはシミュレーションを活用して解析を行っています。これにより、信頼性を向上させることができます。
電源の制御にはマイコンによるデジタル制御を採用しており、船の種類やアプリケーションに応じて柔軟に制御方式を調整することができます。船舶の電源装置開発において高い品質と信頼性を提供することを目指しています。
- 「船用スマートグリット構想」の実証実験にて50kWクラスハイブリット電源装置を開発。
- 「シームレス船プロジェクト」にて50kWクラスハイブリット電源装置を実船掲載にて協調動作検証を実施。
- 200kWクラスの大容量電源ユニット(SiC)の1次試作完了。
次世代ハイブリッドモータードライブ開発
船舶の環境負荷低減のために、再生可能エネルギーの活用が進んでいます。特に電気推進システムでは、推進エネルギーと再生可能エネルギーの統合が容易であり、適切な電力マネジメントにより効果的な運用が期待されています。また、電気推進では制御の応答性が高く、遠隔制御や監視も容易であり、自動運航システムにも有望なシステムとして注目されています。
当社では、高効率、小型、安価なモータードライブシステムの開発に取り組んでいます。ただし、数千kWの大容量システムでは、ノイズの問題や他の船内機器への影響など、船舶に固有の課題も考慮する必要があります。さらに、各国の船級協会のルールにも適合する必要があり、システムの冗長化も求められています。このため、小型でありながら冗長性を持つ多巻線モーターの制御技術にも取り組んでいます。
船舶の環境負荷を低減し、持続可能な航海を実現するために、高効率・小型・安価なだけでなく、再生可能エネルギーとの接続や将来の自動運航システムとの連携が可能な次世代モータードライブシステムの開発を進めています。
- 500kWクラス水冷ヒートシンクを開発。
- 500kW誘導電動機のモータドライブを試作開発(SiC/キャリア同期検証)。
- 多巻線モータ制御基礎研究を開始。