2026.7.7

活動事例

東京海洋大学 海洋AIマッチングWeek

【レジデントシップ】東京海洋大学 髙橋さんの体験談

 

はじめに

BEMAC東京データラボ(以下、「データラボ」)は、AI技術を活用し、海事業界の課題解決に向けた研究開発やデータ分析に日々取り組んでいます。今回は、東京海洋大学からレジデントシップとして参加いただいた髙橋さんに、実際のビジネス課題に取り組んでもらった体験談を語ってもらいました。
東京海洋大学 海洋AIコンソーシアム

自己紹介

東京海洋大学博士後期課程2年の髙橋顕嗣です。
私の研究分野はSfM(Structure from Motion)です。SfMは、複数の画像からカメラの位置・姿勢や対象物の3次元構造を復元する技術であり、ロボット、自動運転、測量、3次元地図作成など、さまざまな分野に応用されています。
私はその中でも、複数画像から得られる観測情報をもとに、カメラ姿勢や3次元構造をより高精度に推定するための最適化アルゴリズムに関する研究に取り組んでいます。

メンターの羽生さん(左)と髙橋さん(右)(BEMAC東京支社にて)

レジデントシップの概要

東京海洋大学の海事業界AI人材育成プログラム(WISEプログラム)が主催する「Marine AI Matching Week」を通じて、2025年10月から2026年5月まで、週に1日程度の頻度でレジデントシップに参加しました。
今回のレジデントシップでは、Weather Routingに関する技術開発に取り組みました。Weather Routingは、気象・海象データを活用して船舶の最適な航路を探索し、航海時間の短縮、燃料消費量の削減、CO₂排出量の削減などを支援する技術です。 業務では、基本的なWeather Routingシステムの開発を行うとともに、航路最適化アルゴリズムの検討を行いました。

レジデントシップでの業務

まず、Weather Routingの基本的な考え方や、既存の航路最適化手法について理解を深めました。Weather Routingは、気象・海象データ、船舶性能、航路探索、評価関数、最適化アルゴリズムなど複数の要素が連携するシステムであるため、まずは全体のシステム構成を整理し、各機能の役割や入出力関係を明確にしました。
その上で、航路探索に必要となる気象データの取得・整形や、航路評価に用いるシミュレーション機能の開発に取り組みました。具体的には、航行海域や航海時刻に応じた気象情報を扱えるようにし、航路候補ごとに航海時間や燃料消費量を評価できる基盤を構築しました。
また、航路最適化の中核となるアルゴリズムとして、DP、ダイクストラ法、GAなどの手法を実装しました。これらの手法について、計算効率、探索の安定性、航路表現の自由度、将来的な拡張性といった観点から特徴を整理し、Weather Routingシステムへの適用可能性を検討しました。最終的には、各アルゴリズムの利点や課題を比較し、今後のシステム高度化に向けた検討材料を整理しました。

レジデントシップの感想

まず、今回のレジデントシップを受け入れてくださったBEMAC株式会社の皆さま、そして日々ご指導いただいたメンターの方々に心より感謝申し上げます。
今回のレジデントシップでは、自身の研究分野であるSfMとは異なるWeather Routingというテーマに取り組みました。普段の研究で扱っている画像データとは異なり、気象データや船舶運航に関する知識にも触れる機会がありましたが、メンターの方々に丁寧にご指導いただきながら、業務に取り組むことができました。
特に、今回のレジデントシップでは、文献調査から始まり、システム構成の整理、データ処理、シミュレーション機能の開発、航路最適化アルゴリズムの実装・比較検討、成果整理まで、開発業務の一連の流れを経験できたことが非常に貴重でした。個別の機能を実装するだけでなく、システム全体の構成を考えながら必要な機能を整理し、それらを組み合わせて一つの技術開発としてまとめる過程を経験できたことは、大きな学びとなりました。
また、実際の開発では、アルゴリズムを実装するだけでなく、入力データの扱い方、シミュレーション結果の評価、計算効率、今後の拡張性など、さまざまな観点を考慮する必要があることを実感しました。大学での研究とは異なる実用的な技術開発の進め方に触れることができ、自身にとって非常に有意義な経験となりました。 今回の経験を通じて、専門分野とは異なる課題に対しても、これまで研究で培ってきた考え方を活かしながら取り組めることを実感しました。今後も、今回のレジデントシップで得た経験を大切にしながら、自身の研究や技術開発に活かしていきたいです。

メンターからのメッセージ

髙橋さんには船舶性能部を除いたほぼ全てのアルゴリズムを構築してもらいました。私からは、アルゴリズムの実装を直接支援するというよりも、方向性を示しながら伴走する形でサポートしました。その後は髙橋さん自身で調査し、考え、構築作業をしてもらいました。問題認識・課題設定・対策立案・実行というPDCAサイクルを1週間に1日という限られた時間で行いながら全体システムからコアのアルゴリズムまで開発し一通り構築したというのは目を見張る成果だと感じています。大変な部分は多々あったかと思いますが、髙橋さんのこれからのエンジニア人生に対して価値のある時間になったのではと思います。
この調子で博士課程の修了まで頑張っていただきたいと思います。今後も引き続きメンターとしてサポートできる部分は積極的にさせていただこうと考えております。

担当メンター:BEMAC 東京データラボ 課長 羽生一成

今後のデータラボの取り組み

今後もデータラボは、東京海洋大学をはじめとする様々な大学・研究機関との連携に取り組んでいきます。このようなレジデントシップを通じて、海運業界に興味を持っている学生への支援を続けていきます。